2007年11月17日土曜日

また最初から

 私が道学者くさくなったというんですか! それも齢をとった徴でしょうか。そのくせ自分では間違いなくぎりぎりの感情に奔っているつもりですがね。もう時には矢も盾もなく人類を罵りのめしてやりたくなります。いやこれはいつか、たとえ十年先のことになろうとも、構想の大きなある長編小説でかならずやって見せますよ。

      1952年、フロベールが愛人ルイズ・コレにあてた手紙より


 ここに書かれている構想のある大きな小説が『ブヴァールとペキュシュ』で、フロベールはこの一作を書くために1500冊以上の医学、生理学、園芸・農業、化学、歴史、考古学、宗教、哲学、政治、教育學などの書物を読破したという。ううむ、それは敵いません。



フロベールは人も知るとおり、《芸術家は自然における神の如く、その作品に自己の姿は見せてはならぬもの、人間は無、作品がすべて》であることを信条とした作家である。

      『ブヴァールとペキュシュ』(岩波文庫・鈴木健郎訳、まえがきより

 私小説というのはまさにこの逆説から成り立っているわけで、それはそれで恐るべし。

 

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