私などにはまったく見知らぬ世界であるアパレル業界の、おそらくはその要に位置していると思われる縫製工場という一種強烈な生産現場、そこに勤める雪絵の視点から見える光景がありありと描かれていて、一気に読まされました。
現代日本において(いや世界のどこでも)物を生産することはすでに割の合わない業と成り下がっているのは明白で、むしろ現代は物を生産せずに情報やお金でお金を稼ぐという、きわめて現代的錬金術としての第四次産業が世界をコントロールしており、生産の場はその支配下にあって「一円でも安く」という消耗戦に否応なく巻き込まれざるを得ない。だから、この作品に描かれているミネタもハラグチも、実は程度の差があるだけでどちらも割の合わない消耗戦の最前線にあるのです。
そういう世界や日本や社会や企業の破綻=不合理が、生産の現場の向こう側から描かれ、照射されているようで実に面白い作品でした。
小林多喜二の「蟹工船」が不意に売れ、読まれたというのも単なる時代の気まぐれなどではなく、むしろ現代の必然なのだと思わされました。そういう意味で、この作品も現代大阪の必然の綻びが真っ直ぐに描かれた作品なのだと思いました。
ただ、ひとつだけ、欲目で言わせていただきますが、この作品の終わり方が私には不満でした。
この世の不合理が、ひとつの小さな綻びとして、ミネタという四国の小さな縫製工場の社長の失踪あるいは自死という表現されているのに、どうしてその綻びを作者自身が繕ってしまうような結末にしたのか?
文学は現実を映す鏡なのですから、綻びは綻びのままに提示して終われば良いのであって、作者が結末で福ちゃんにメールを打つ形でこの世の綻びを繕ってしまうのはいかがなものでしょう。
と、勝手に読ませていただき、勝手な感想を書かせていただきました。
そして、その上もう一度書かせていただきますが、美月さんの創作姿勢、真っ直ぐでほれぼれとし、織田作の作品が連想されたりして、あれ?
私、不思議に関西人の友人が多いのですが、ネガティブを描きつつもポジティブ、それが関西のひとたちの魅力なのかもしれません。
美月さんの次作が、また楽しみです。
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