2007年9月26日水曜日

歌っても踊ってもいけません

 昨日のS文化賞受賞者の歌集をぱっと開いたら
童話より童話へわたる少女ゐていずれは童話ならぬ世界へ
 という一首が目に飛び込んできました。
たった31音のなかに童話という言葉が3回も使われているのは、定型詩としてはむしろ絶対にしてはいけないことなのでしょうが、あえて意識的に、戦略的に3回使われているのでしょう。

 童話より童話へわたる少女ゐて
 いずれは童話ならぬ世界へ

 こう分かち書きすると立派な2行詩ですらあり、人間という存在への、今様に言えば痛い、けれども優しい想像力に満ちた歌ではあります。

そんなことを考えているうちに、また、『原典対照ルイス・キャロル詩集』(高橋康也・沢崎順之助訳 ちくま文庫)のなかの「ぼくの妖精」を思い出してしまいました。
 ぼくの妖精
ぼくについている妖精が
眠っちゃいけないって言うんです
あるとき怪我をして叫んだら
「泣いたりしてはいけません」

つい楽しくてニヤリとすれば
笑っちゃいけないって言うんです
あるときジンが飲みたくなると
「ものを飲んではいけません」

あるときご飯が食べたくなると
「ものを食べてはいけません」
勇んで戦に馳せ参じたら
「喧嘩をしてはいけません」

悩み疲れてぼくは訊く
「していいこと なにかあるの?」
妖精しずかに答えていわく
「質問してはいけません」

《教訓》汝……すべからず


 それならさしづめ、私の場合はこう言われるだろう。
 「歌っても踊ってもいけません!」
 なぜ?
 少なくとも散文を書く者はディオニュソス的であってはならない。
 そう思うだけ。

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